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  • 執筆者の写真真佐子 鳥谷

ミッションを再確認するー野田市郷土博物館

更新日:2022年5月2日



予定外に始まったワークショップ


2018年10月30日,野田市郷土博物館・市民会館 指定管理者 NPO法人野田文化広場の学芸員のみなさんと法政大学キャリアデザイン学部 金山喜昭教授のご協力を得て,研究チームが開発した博物館活動の評価指標作成フレームワークを用いて評価指標を作成するワークショップを行いました。


当初は,フレームワークを見ていただき,現場の目線から意見をもらう予定でしたが,実際体験してもらった方が理解が早いと,急遽参加者全員で実際にフレームワークを用いて評価指標を作成することに。


評価指標の作成は以下のプロセスで行いました。


1. 野田市郷土博物館と主要ステークホルダー間の価値連鎖分析

2. イネーブラーフレームワークを用いた、博物館ミッションに基づく機能抽出

3. 1で同定したステークホルダーと2で同定した機能をアロケーションし、評価指標を作出


4名の学芸員全員でご参加いただけました。



独自の価値循環


ワークショップでは,第一のステップとして,顧客価値連鎖分析(CVCA)という方法を用いて,博物館を取り巻くステークホルダー(関係者)との価値のやりとり・連鎖を分析します。この分析を行うことで,博物館が地域においてどのような存在であり,どんな価値を提供しているのかを可視化することができます。


これがCVCAの結果です。



CVCAを書いてもらって印象的だったのは、「学芸員はボランティアの人たちから郷土のことを沢山教えてもらう」という価値循環があることです。郷土史がテーマであるため,地域住民が講師になることもあります。博物館側が一方的に知識を提供するだけではなく,相互の関係性があることがとても興味深いと感じました。また,運営にもかなりボランティアの意見が反映されているようでした。


地域住民だけでなく,地元の商店との関係性も構築されていることも見てとれました。博物館は事業情報を提供し,商店からは地域の情報や寄付を受取ります。商店の人が講師になることもあります。講師になることは,やりがいを生み出します。こうした価値の循環は,野田市郷土博物館の特徴的な点です。



ミッションを確認する


NPO法人野田文化広場が指定管理者として活動をしていた当時,下記の3つにミッションが整理されていました。


・地域の文化資源を掘り起こし,活用する

・人やコミュニティが集い交流する

・人びとの生き方や成長を支援してキャリアデザインをはかる


私たちの研究チームでは,イネーブラーフレームワークという考え方を用いて,博物館の機能をミッション,ストラテジー,アクションの3階層で整理することを提案しています。イネーブラーフレームワークとは,下位の要素が上位の要素を成り立たせ(enable),逆に上位の要素が下位の要素を利用して成り立つ(utilize)という関係性を示すものです。下位の機能は,上位の機能を成り立たせるにはどんな機能が必要だろうか?ということを考えながら,ブレークダウンして書いていきます。

例えば,人やコミュニティが集い交流するためにはどんな機能が必要か?人を集める機能と人を交流させる機能が必要だろう・・・という感じです。


このイネーブラーフレームワークを用いて,野田市郷土博物館のミッションを配置してみると,「地域の文化資源を掘り起こし,活用する」というミッションは,実はミッションではなく,ストラテジーに該当するのではないかということに気づきました。


なぜなら,何のために「地域の文化資源を掘り起こし,活用する」のか?さらに上位の目的があるはずです。例えば,地域を発見することで,自分達のアイデンティティを確立する,などの目的があるのではないでしょうか。つまり,手段が目的化してしまっていることがわかりました。

参加者からは,「 博物館ミッションが、実はミッションのレイヤーでなく,その下のストレテジーレイヤーにあるということがわかったのは,とても意味があると思う。確かに、『地域の文化資源を掘り起こし,活用する』というのは、その上に目的があるはず,考えたことがなかった。」という感想をいただきました。


また,「書き出してみると、自分たちが現在行っている業務や事業が,きちんとミッションに紐付けられていることに気づくことができて,位置づけを再確認できるのがよい。」という感想もありました。


(事前に筆者が例として作成したイネーブラーフレームワークを用いた機能分解)

(当日のワークショップの結果)



いよいよ評価指標を作ります!


次に,CVCAで確認したステークホルダーにアルファベットを振って,イネーブラーフレームワークで見出した機能に割り振っていきます。これにより,それぞれのステークホルダーがどの博物館機能の興味関心を持つかを表すことになります。


例えば,「市民が館の企画に参加できる」機能について興味関心を持つ,価値を享受することのできるステークホルダーは,企画参加者,貸部屋利用者,寺子屋講座講師,市民,市民団体です。これらの ステークホルダーが期待する価値は,やりがい,社会参加。

そして,評価の観点は, 参加者が次回も参加したいと感じたかどうか? やりがいを感じたかどうかという観点もあるでしょう。評価項目は,やりがい度やリピート率といったところでしょうか。


期待する価値として,発表の場,発表に対する評価もあげられました。そうすると,評価の観点は, 参加者の思いを表現し伝えることができたかどうか? ということになります。


そして,これらをどのように評価していくのかという評価方法を考えます。アンケートや参加回数で評価するといったことが考えられます。







参加者の感想


これら一連の作業の感想をいただきました。

  • それぞれをどうやって評価したらいいかを考えるのはとても難しい。

  • ステークホルダーが何を求めているかは、とりあえずの推論で書いておくしかない。それをまずは確かめないといけないだろう。

  • 経験の浅い職員にとっては、ブレークダウンしていくのが大変。自分の仕事と、博物館ミッションがどう結びつくのか、その間をイメージしにくい。とにかく今は自分がやっている作業しか見えない。もしかしたら、まず自分の行っている業務を書き出しておいて、その上位の意味付けを考えていく、逆の方向からの作業もあるといいのかもしれない。

  • 経験の浅い職員にはイメージしにくく大変かもしれないが、逆に、自分の業務を博物館全体の中でどう位置づけるかということを考えるための、いいきっかけになる。

  • 一般の人と一緒にこうしたワークショップをすると、ステークホルダーのニーズも把握できていいかもしれないが、普通の人だと難しいかもしれない。ボランティアの人だったらできるだろう。


考察


評価の観点(参加者が発表する際に、参加者の思いを伝えることができたか?など)を書くところまでは順調に進むのですが、そこから評価方法(アンケートなど)および評価項目(参加回数、次回参加したいと思ったかという設問など)につなげるまでの複雑さが戸惑いを産むようでした。評価方法、評価項目の例のセットを何らかの形で用意しておくとよさそうだと感じました。


また,作成した評価項目を参考にしながらイベント等を企画すると,何が博物館に求められているかに紐づけた企画をすることができるのではないかと思います。そして,それらの評価項目を使って実際に評価してみることで,本方法が実際に役立つのかを確認することができるでしょう。





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